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『不思議な喫茶店の光の落ち葉』(2010.2.1-2.28)
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ここはある公園の脇にある不思議な喫茶店

ここでは葉っぱから漏れた光が落ち葉に変わる 

あの子は朝のコーヒーを呑みながら

さっきひろった一枚の落ち葉をぐいとポケットにつめこんだ

『希望という名の絶望』(2010.3.1-3.31)
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ろうそくのほのおの 消えるまぎわのように

消えてしまうまえにだけ みえるきこえることがある

それは希望という名の絶望というらしい

あの子「なんで、絶望だと分かっているのに希望だなんて言えるの?」

ボク「うーん。なんでだろう、そんなこと気にもしなかったよ。」

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『非人情なこと』(2010.4.1-4.30)
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ここはある公園の脇にある不思議な喫茶店

ここでは葉っぱから漏れた光が落ち葉に変わる 

あの子は朝のコーヒーを呑みながら

さっきひろった一枚の落ち葉をぐいとポケットにつめこんだ

『Goodbye,Blue』(2010.5.1-5.31)
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街の郊外にある小屋に今日はあの子が尋ねて来た。ここ、たまに通るけどいつもドア開いてないよね、とあのは子は言った。そう?ボクは答える。今日はよく晴れている、日射しを浴びると少し汗ばんでくる。あの子も今日はTシャツだ。 

大して掃除もしてない、埃がうっすら積もった椅子にあの子は気にもせず座る。君はここで絵を描いては飾ってるけど、いつもドアが開いてないからあまり見れないね、あの子は言った。見せたくないの? 

見せたくない訳じゃないんだ、見せたくない訳じゃ、ボクは言葉につまる。 わたしは、もしドアが開いてたらちょっと覗いて行こうかなって思うかな、あの子は言った。ボクははっきりとした返事もせず描きかけの絵を見ていた。 

その次の日、空は昨日に引き続きよく晴れていた。ボクは、ゆっくりとドアを開けた。その瞬間、部屋の中をなま暖かい風が吹き抜けてその風は机や椅子や絵の周りにまとわり付いて淀んだ、でもこの部屋に馴染んでいた空気をどこかに持って行ってしまった。鉛筆はコロコロと机の下へ転がり紙も部屋中に舞った。 

茫然としたボクはその直後、あの子の顔を思い出して少し笑ってしまった。なんで今までドア開けてなかったんだろうね、とボクの他に誰もいないこの部屋で呟いた。 

部屋の中にまとはる空気のような、何かは分からないものの色が、青から赤に近づく前の黄色にだんだんと変わってゆく。
 

『少年レッド&ナイトライダー』(2010.6.1-6.30)
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今日は、夜の盗賊団になろう。満天の星空の下で秘密を分け合いに。それってなんか夏が始まる前っぽいよね。 

この物語って少年レッドに憧れる少年ブルーの話しなんだ。 

少年ブルーが見てる風景っていうか、うん。今、決めたんだ。

『むこう側の庭』(2010.7.1-7.31)
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大人には、いや正確には世界の果てを知ってしまった人、世界の声にいつしか慣れてしまった人には、見つからない場所があって、でもそこは、世界はどこまでも広がっていると疑っていない人、世界の声に耳をすます人、例えば子供なんかは案外簡単に見つけることが出来るのかもしれない。

夏休みの始まった頃、家の近所を歩いていると一匹の大きな蛙を見つけた。それはそれは大きくて、沼のヌシ、なんて言葉を聞くとワクワクしてしまうボクはそっと後を追いかけた。蛙はけしてぴょんぴょんとは言えないようなノロさで田んぼのあぜ道を行き、そっと草の影に身を隠した。そこは自分の背丈以上もあるトウモロコシ畑のような場所で先がまったく見えない。でも夢中になって草を掻き分けて行った。もうその時には蛙の事なんかはすっかり忘れていて、まるでジャングルの探検隊になった様な気分だった。

いつの頃だったか、あの場所をふと思い出して少しだけ探してみたことがある。でも、それらしき場所は見つからなかった。どっかで、分かっていたのかもしれない。しょうがないなーあの頃のボクを探して聞いてみよう。

もし会えたとしても、教えてやんねーよって、言われるかなあ。

『白い家』(2010.8.1-8.31)
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丘の上にある、白い家。
その家は、木造でドアや柱の白いペンキは大分剥げてきている。部屋はガランとした一部屋だけで、いくつかの大きな窓、ソファ、小さな木の机と椅子、部屋の北側の隅には簡素なキッチンがある。入り口は表と裏、両方にあって四段くらいの階段がある。部屋から見える景色は丘を下る道の先に海が広がっている日もあれば、草原が続いている日もある。雨が降れば海くらいできるさ、なんていうような世界があると聞いたことがある、きっとそんな感じだろう。

僕の内の多分、真ん中辺りにこの家はあって、ここに来た時にはいつもする事がある。窓を全部開けて、玄関も開けて、部屋の中に風を流す。湿った風が部屋に流れ込んでくる日もあるし、乾いた風が部屋を吹き抜ける日もある。そして、ソファで寝転がりながら屋根の上の、もっと上の空、夜空を想像したりするんだ。
でも、たまにここのことを忘れてしまうんだ。

『コーヒーシェーク』(2010.9.1-9.30)
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地面に仰向けに寝てみると空の高さがよく分かる。初めて気づいたのはたしか中学生の頃だったろうか、ずっと忘れてたけどやっぱりそうだった。

なんて小さな世界に生きてるんだろう、少しだけ悲しくなった。

僕は写真機で、空の高さとか世界の広さとか、見つけようとしているのかもしれない。

青すぎる夏のうだるような暑い日にコーヒーシェークを飲んだ。

『スケート ・ ボーダー』(2010.10.1-10.31)
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夕闇がもうそこまでせまってきた、ひとりスケートボードで街を滑っている。いつもの帰り道や、見なれた風景に、当たり前にある境界線のようなものを、曖昧にしていく。 

スピード メロディー 光が流れる。 

こんな、少しの時間がまた自分をもとに戻してくれる。この緩やかなスピードで時間泥棒を振りきろう。
 

『bird’s-eye view 』(2010.11.1-11.30)
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道をさまよい歩いて、路頭に迷うっていうのかな。 

 

迷ったっていいじゃん。わかんないからさ。全部、本当のことなんだから。うそついたってね、そんなことしてもしょうがないじゃん、でも、辛いときも、あるよね。 

この土地に生きてて、暮らしていたら、道を歩いていくと海で行き止まりなんだ。でも、海で遠くを見て帰ってくるのも、いいんじゃないかな。それで、またわかんなくなったら海でも見に行ってさ、道、歩いて。鳥がいるよ。

おわり

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no story あとがきに代えて

写真を通して物語を語る違和感にずっと付きまとわれていた。それでも物語を語ろうとするのは、なぜなんだろう。


写真は写真である時に本来もつ魔法のような力を発揮するはずだ、なんて、それがどういうものなのか今はまだ見当もつかないけれど。
でも、どこかでそれを信じながら、掴んだ気がしたしっぽの先が手の中で消えてしまいながら写真を撮る自分もまた人間であるから、物語はそこからひょいと顔を出す。
「お前がくると邪魔なんだよ、写真の魔法が消えて行ってしまうんだ」と突き放しそうになる、が、なぜだか手を差し伸べてしまう。 両方にひっぱられながら耐えるしかないのだ。

世界の秘密はいつもぼくらのすぐそばにいるけれど気づかない。ある道を歩んで行く途中、ふっと気づいた気がする時もあるけど、ただそれだけなんだ。
 

物語と現実の境目がどこかなんて、今日もわからない。 でもそんなわからないことが、未来に向かっているような気がするんだ。十一ヶ月間おつきあいして頂いたみなさん、いつも協力してくれるelvis pressの二人、rainrootsの名プリンターゆじさん、写真をいつも見てくれる方々、ありがとうございました。さあ、また今からだ。まだ始まっちゃいねえよ(from キッズリターン)ですね。2010年12月 小林 豊

写真家 小林豊君が

今年に入り企画書を2回持ってきました。

その中に・・・

『世界を写す少しの物語』がありました。

2月から月1作品で11ヶ月11作品の企画展示案でした。

 

面白そうって事で開催です。

僕もまだまだどんな11ヶ月になるかわかりませんが楽しみです。

 

rainrootsの窓際での展示になります。

 

2010年1月31日

rainroots

プロフィール

小林豊 / Yutaka Kobayashi 

1980年 岡崎生まれ 

作品集 

2009年3月 Goodbye,Blue Monday(ELVIS PRESS) 

2009年12月 みんな君がしたこと(ELVIS PRESS) 

展示 

2008年2月 No,12GALLERY 「OUT OF STEP」展 

2008年2月 YEBISU ART LABO 「my room is full of zines」展 

2009年3月 YEBISU ART LABO 「Goodbye,Blue Monday」展 

2009年6月 rainroots 「Goodbye,Blue Monday」展 

2009年7月 リブロ名古屋店 「Goodbye,Blue Monday」展 

2009年10月 喫茶nico 「Goodbye,Blue Monday」展

作者コメント 

こんにちは、今回の展示を企画しました小林豊です。

2月からレインルーツの窓際を使わせてもらいちょっとした企画を始めようと思っています。

内容は作品をつくって行く過程でまだ見えていないその形に近づいて行く為のイメージボードを展示していこうと思っています。

僕自身もまだどんなことになるか想像もつきませんが、

その時その時に掴んだイメージを写真や言葉に写せたらと思います。 

それではみなさま、レインルーツ店頭にお立ち寄りの際は是非ご覧下さい。

 

2010年2月2日

小林豊

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今回サイトを新しくするために
過去のサイトなど見ていました
その中に小林くんが2010年に企画した
「世界を写す少しの物語」がありました
その時の自分より今の自分の方がこの企画がグッと入ってきた
このまま埋もれるのはもったいない
いや
駄目だなって思ったので
リンクつなぐのではなく
あたらしくページに載っけました

コピペでまとまったこのページなんかいいなって思います
読んでみてください

2010年の初代店舗の窓際で密かに、、、点を打ち続けていたなって


2017.4.19
松原のRAINROOTS
湯地信愛

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